セロトニンとは「幸せホルモン」とも言われる、脳内の神経伝達物質の1つです。他の神経伝達物質に作用して、精神を安定させる働きがあります。セロトニンの分泌は食事や睡眠、運動など生活習慣に大きく左右されます。毎日を楽しく過ごすために不可欠なセロトニンですが、現代人はセロトニンが低下傾向にあると言われています。毎日を気分よく過ごすためにも、日頃からセロトニンの分泌を促す生活習慣を意識することが大切です。
この記事ではセロトニンの役割や、セロトニンの分泌が低下する原因、セロトニンの分泌を増やすポイントについて解説します。「不安やイライラを感じやすい」「毎日を気分よく過ごしたい」と思っている方は、ぜひこの記事を読んで、参考にしてください。
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・「幸せホルモン「セロトニン」とは?増やす方法・低下する原因を解説 #セロトニン」を公開しました。:2025年2月19日(水)
幸せホルモン「セロトニン」とは?
「セロトニン」という言葉を初めて聞く方もいるかもしれません。セロトニンをよく知るために、ここではセロトニンの働きや成分について解説します。
精神を安定させる働き
神経細胞から他の細胞へ、情報を伝えるための化学物質のことを「神経伝達物質」と言います。
セロトニンはこの神経伝達物質の1つで、他の神経伝達物質であるドパミン、ノルアドレナリンをコントロールします。ドパミンは喜びや快楽などを司り、ノルアドレナリンは恐怖や驚きなどを制御する物質です。セロトニンはこれらの量を適切に保つことで、精神を安定させる働きを持ちます。
不足すると不調や精神疾患の原因に
セロトニンが不足すると、心の調子を崩したり、精神疾患を引き起こすことがあります。
ドパミンとノルアドレナリンのバランスが崩れると、不安やうつ、パニック障害などの症状を誘発しやすくなります。
うつ病が発症する原因の1つとして、脳内におけるノルアドレナリン、セロトニンの不足が考えられています。心の調子を整えるために、セロトニンは必要不可欠な存在なのです。うつ病に使われる薬には、脳内のセロトニンを増やして気分を安定させるものがあります。
必須アミノ酸「トリプトファン」から作られる
セロトニンは、必須アミノ酸「トリプトファン」から合成されます。アミノ酸とはたんぱく質を構成する成分のことで、必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分類されます。
必須アミノ酸とは、人や動物が自分の体内で作れないアミノ酸のことです。必須アミノ酸の1つであるトリプトファンは、食事から摂取する必要があります。トリプトファンは主に肉や魚に多く含まれます。
セロトニンの低下の原因
一部の専門家によると、現代人の脳内で、セロトニンの分泌量が低下している傾向にあると考えられています。
セロトニンが低下する原因として、次の3点があげられます。
- セロトニンの原料となるトリプトファンの不足
- 運動不足
- 不規則な生活リズム
それぞれの理由を解説していきます。
セロトニンの原料となるトリプトファンの不足
トリプトファンはセロトニンの原料であり、必須アミノ酸のため、体内で合成できません。そのためトリプトファンは、食事から摂取する必要があります。
ラットを使った実験から、摂取するトリプトファンが少ないと、脳内のセロトニンも減少することが分かっています。
特に現代人は、過剰なダイエットや外食中心の食生活により、栄養バランスが偏りがちです。原料となるトリプトファンが不足すれば、原料が不足するためにセロトニンの分泌量も低下すると考えられます。
運動不足
運動不足もセロトニンが不足する原因の1つです。セロトニンは呼吸、咀嚼(そしゃく、ものを噛むこと)、歩行などのリズム運動によって分泌が促されます。
またデスクワーク中心で、体を動かす習慣が少ない方も多いのではないでしょうか。運動量を意識せずに生活していると、運動不足になり、セロトニンの低下を招く可能性があります。
不規則な生活リズム
セロトニンの分泌は、太陽光を浴びることで活発になります。近年は1日のほとんどを屋内で過ごし、太陽光を浴びる機会が減っている方も少なくありません。また昼夜逆転した生活を送っている方は、太陽光をほとんど浴びずに1日を終えてしまいます。日光を浴びる機会が減少するとセロトニン不足になり、気分が落ち込む傾向にあるため、注意が必要です。
セロトニンを増やす方法
セロトニンの分泌量は、生活習慣に大きく影響を受けます。生活の中でセロトニンの分泌量を増やすポイントは、以下の3つです。
- トリプトファンを摂取する
- 日光を浴びる
- 適度な運動を行う
具体的にどんな行動を心がければよいのか、詳しく解説します。
トリプトファンを摂取する
セロトニンの原料となるトリプトファンを、日頃の食事から積極的に摂取しましょう。
トリプトファンは野菜やバナナ以外の果物には少なく、動物性のタンパク質を中心とした食品に多く含まれています。トリプトファンを含む食品は、以下の通りです。
- 肉や魚
- 卵
- チーズなどの乳製品
- 豆腐や納豆などの豆製品
- ゴマ
- バナナ
また米やパンなどの炭水化物は、トリプトファンの吸収や合成を促進すると言われています。セロトニンを十分に分泌させるために、これらの食品をバランスよく取り入れましょう。
日光を浴びる
セロトニンの分泌は、太陽光によって活発になります。規則正しい生活リズムを送り、なるべく日光を浴びる工夫をしましょう。
たとえば、朝起きたらカーテンを開けて朝日を取り込んだり、積極的に外へ出て日光を浴びることで、セロトニンの分泌を促すことができます。
適度な運動を行う
セロトニンは呼吸や咀嚼(そしゃく、ものを噛むこと)、歩行などのリズム運動によって分泌が促されます。
ウォーキングの場合はただ歩くのではなく、心地よい汗を流す程度に、テンポよく早足で歩くと効果的です。また以下のようなリズム運動を意識して取り入れるとよいでしょう。
- 登り坂や階段の昇降
- ジョギング
- スイミング
- サイクリング
- エアロビクスエクササイズ
- 太鼓叩き
- ジャズやヒップホップなどのアップテンポなダンス
たとえばエスカレーターやエレベーターの代わりに階段を使うようにすれば、通勤にもリズム運動を手軽に取り入れられますよ。
またテレビやスマホを見ながらの「ながら食べ」も咀嚼回数を減らし、セロトニンの分泌量を低下させる原因となります。食べ物を口に入れてから飲み込むまで、20回以上噛むよう心がけましょう。
まとめ
今回は幸せホルモン「セロトニン」の働きと、現代人にセロトニンが不足する理由、セロトニンを増やすためのポイントについて解説しました。
セロトニンは気分を安定させて、日々を楽しく過ごすために大切な物質です。はっきりした原因もないのになんとなく不安を感じる、気持ちが落ち込んでしまうなどの場合は、セロトニン不足が原因かもしれません。
セロトニンの分泌量を促すためには、トリプトファンを含む食事や日光を浴びられる生活リズム、リズム運動を取り入れることが重要です。
毎日を気分よく過ごせるよう、この記事で紹介したポイントを実践してみましょう。