腸内環境を整える方法｜食事・運動・生活習慣まで徹底解説 #腸内環境

3つの菌の役割

善玉菌の代表格であるビフィズス菌や乳酸菌は、腸内を酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑える働きがあります。また、ビタミンを合成したり、免疫力を高めたりする重要な役割も担っています。

一方悪玉菌は腐敗物質を作り出し、便秘や下痢、肌荒れの原因となります。ただし悪玉菌も完全に悪者というわけではなく、免疫細胞を刺激して、免疫機能の維持を助けるなど大切な役割があります。完全に排除するのではなく、悪玉菌が増えすぎないよう、適度なバランスが取れた状態が理想です。

日和見菌は、腸内環境の状態によって、善玉菌にも悪玉菌にも味方する性質があります。そのため、善玉菌優位の環境を保つことが、健康維持の鍵となるのです。

腸は「第二の脳」

腸は「第二の脳」とも呼ばれ、脳とは独立した神経ネットワークを持っています。腸と脳は「脳腸相関（のうちょうそうかん）」という双方向の情報伝達を行っており、腸の状態が、気分や感情にも影響を及ぼすことが分かっています。

たとえば、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の約90％は腸で作られています。腸内環境が乱れているとセロトニンの分泌量が低下し、不安やイライラ、落ち込みやすさにつながることがあると考えられています。

お腹の調子が改善する

腸内環境が整うと、まず実感できるのが、お腹の調子がよくなることでしょう。善玉菌が増えることで腸の動きが活発になり、便秘や下痢などの症状が改善されやすくなります。

また、腸内で発生する有害なガスも減少するため、お腹のハリや不快感も軽減されます。毎日のお通じがスムーズになることで、体が軽く感じられ、日常生活も快適に過ごせるようになるはずです。

免疫力がアップする

体の免疫細胞の約70％は、腸に集中しています。腸内環境が整うと、これらの免疫細胞が正常に働き、病原菌やウイルスから体を守る力が高まります。

善玉菌は腸の粘膜を強化し、有害物質が体内に侵入するのを防ぐ、バリア機能も担っています。たとえば風邪をひきにくくなったり、アレルギー症状が軽減したりなど、免疫力向上によるさまざまな効果が期待できます。

美肌効果

腸内環境と肌の状態は、密接に関係しています。悪玉菌が増えると、腸内で発生した有害物質が血液を通じて全身に運ばれ、肌荒れやニキビの原因となります。

腸内環境が整うことで、老廃物の排出がスムーズになり、必要な栄養素が吸収されやすくなります。その結果、肌のターンオーバーが整い、透明感のある健やかな肌へと導かれるのです。

心の健康にも好影響

腸内環境が整うと、幸せホルモン「セロトニン」の分泌が促進されます。セロトニンは気分を安定させ、前向きな気持ちを作り出す重要な物質です。

また、腸内細菌は「GABA（ギャバ）」というリラックス成分も産生します。このリラックス効果により、ストレス緩和や血圧の低下、睡眠の質の向上に役立つとされています。

ストレスを感じやすい現代社会において、腸内環境を整えることは、メンタルヘルスケアとしても重要な意味を持つのです。

食事で腸内環境を改善する

腸内環境を整えるうえでもっとも重要なのが、食事です。善玉菌を増やし、悪玉菌を抑える食材を積極的に取り入れることで、腸内フローラのバランスを理想的な状態に導くことができます。

・発酵食品を毎日の食卓に

ヨーグルト、納豆、味噌、キムチ、ぬか漬けなどの発酵食品には、生きた乳酸菌やビフィズス菌が豊富に含まれています。これらの菌は腸まで届いて善玉菌として働いたり、既存の善玉菌の活動をサポートします。

特に納豆に含まれる納豆菌は、熱や酸に強く、生きたまま腸に届きやすい性質があります。毎日1パックを目安に、朝食や夕食に取り入れてみましょう。

・食物繊維で善玉菌を育てる

食物繊維は善玉菌の餌となり、腸内で善玉菌を増やす働きがあります。特に「水溶性食物繊維」は、善玉菌の大好物です。海藻類、オクラ、山芋、アボカド、りんごなどに豊富に含まれています。

また「不溶性食物繊維」も大切で、便のかさを増やして腸を刺激し、排便を促進します。玄米、全粒粉パン、きのこ類、ごぼう、ブロッコリーなどがおすすめです。

理想は1日20g以上の食物繊維摂取ですが、急に増やすとお腹が張ることもあるので、徐々に量を増やしていくとよいですよ。

・オリゴ糖で善玉菌の増加をサポート

オリゴ糖は、善玉菌の栄養源となり、腸内で善玉菌を増やす「プレバイオティクス」として知られています。バナナ、玉ねぎ、ごぼう、アスパラガス、大豆などに多く含まれています。

特にバナナは、手軽に摂取できる優秀な食材です。少し青みが残った状態のバナナには「レジスタントスターチ」という、消化されにくいでんぷんも含まれており、善玉菌の餌になります。

水分補給を意識する

腸内環境を整えるためには、十分な水分摂取も欠かせません。水分不足は便秘の大きな原因となり、腸内環境の悪化につながります。

1日の目安は、体重1kgあたり30～35mlです。たとえば体重60kgの方なら、1.8～2.1Lが理想です。ただし、1度に大量に飲むのではなく、こまめに少しずつ飲むことがポイントです。

朝起きたときに、コップ1杯の白湯を飲むのも効果的です。腸を優しく刺激し、排便を促す効果があります。また食事の30分前に水を飲むことで、消化液の分泌を促し、消化吸収をスムーズにすると言われています。

運動で腸を活性化させる

適度な運動は、腸の動きを活発にし、腸内環境を改善に導きます。特に有酸素運動は、腸への血流を増やし、腸内細菌の多様性を高める効果があることがわかっています。

・1日30分程度のウォーキング

1日30分程度のウォーキングは、腸にとって理想的な運動です。歩くリズムが腸を刺激し、便通を改善します。通勤時に1駅分歩く、昼休みに散歩するなど、日常生活に取り入れやすい方法から始めてみましょう。

・腹筋運動で腸をマッサージ

腹筋を鍛えることで、排便時に必要な腹圧をかけやすくなります。また、腹筋運動は腸を内側からマッサージする効果もあります。まずは軽い腹筋運動やヨガのポーズなど、無理のない範囲で実践しましょう。

・「の」の字マッサージ

お腹に「の」の字を描くようにマッサージすることで、腸の動きを促進します。おへそを中心に、時計回りにゆっくりと手のひらで円を描くように、優しくマッサージしましょう。朝起きた時や、お風呂上がりに行うと効果的です。

睡眠の質を高める

睡眠不足や不規則な睡眠は、腸内細菌のバランスを崩す要因に。腸内細菌にも体内時計があり、規則正しい生活リズムを好むと考えられています。

理想的な睡眠時間は、7～8時間です。毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きることで、腸内細菌の活動リズムも整いやすくなります。寝る前のスマートフォンやパソコンの使用は控え、リラックスできる環境を作りましょう。

また、夕食は就寝の3時間前までに済ませることも大切です。寝る直前の食事は、腸に負担をかけ、睡眠の質を低下させてしまいます。

ストレスと上手に付き合う

ストレスは、腸内環境に大きな影響を与えます。「脳腸相関」により、ストレスを感じると腸の動きが悪くなり、悪玉菌が増えやすくなってしまいます。

ストレスを溜め込まないようにするには、深呼吸、瞑想、ヨガなど、自分に合ったリラックス方法を見つけることが有効です。毎日わずかでも、心を落ち着かせる時間を持ちましょう。

また、笑うことも腸内環境にとってプラスに働きます。笑うことで副交感神経が優位になり、腸の動きが活発になります。好きなテレビ番組を見たり、友人とおしゃべりを楽しんだり、意識的に日常に笑いを取り入れてみてください。

抗生物質の使用は必要最小限に

抗生物質は病原菌の対処に重要な薬ですが、腸内の善玉菌も減らしてしまいます。医師の指示に従って適切に使用しつつ、不必要な使用は避けましょう。

また抗生物質を服用した後は、特に意識して発酵食品や食物繊維を摂取することで、腸内環境の回復につながります。「プロバイオティクス（善玉菌）」のサプリメントを活用するのも1つの方法です。